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その他のがん検査 - 生化学検査 - 腫瘍マーカー・病理診断・検便(がん検査と基礎知識)

一度の撮影で全身のがんをチェックできるというPET検査ですが、より精度の高い診断を得るためには、ほかの検査方法を併用することが有効です。
このページでは、PETとは異なる手法でがんを探す、血液検査などの腫瘍マーカー、病理検査(細胞診断など)、検便などの検査方法、メリット・デメリットについて解説します。

もくじ
腫瘍マーカー、血液検査
マイクロRNA(miRNA)検査
病理診断(生検、細胞診)
便潜血検査(検便)
尿検査

生化学検査

対象部位:全身

血液検査

血液・尿・便を採取し、その中に含まれる化学物質の量を測定することで、健康状態や病気の程度を調べる検査法です。

調べる対象によって複数の検査方法がありますが、がんの発見に役立つ生化学検査には「腫瘍マーカー検査(内分泌検査・酵素検査・たんぱく検査など)」「マイクロRNA」などがあります。

腫瘍マーカー Tumor marker

内分泌(ホルモン)検査・酵素検査・たんぱく検査など

血液検査

体のどこかに腫瘍ができると、血液中や排泄物中に、たんぱく質や酵素、ホルモンなどの特別な物質が増えてきます。それらを分析して異変を検出します。
現在42種類ほどが知られており、消化器がんではCEA、すい臓がんのCA19-9、卵巣がんのCA125などが代表的です。基本的には、検出量と腫瘍の大きさは比例すると考えられ、数値が低下すればがんや腫瘍は小さく、上昇してくれば大きくなっていると考えることができます。
ただし後述の通り、数値には個人差があり、悪性度の判定が難しいため、他の検査を併用するようにします。

がんの治療効果の測定にも広く用いられている検査です。

腫瘍マーカーのメリット

  • 治療効果の測定に役立つ
    腫瘍の大きさとマーカー検出量が比例するので、がん検診のスクリーニングはもちろん、がん治療の治療効果や経過観察、再発チェックにも役立ちます。
  • 採血のみなので副作用がなく、何度でも検査できる
    体内に何かを投与したり、一部を切開したり、放射線被ばくを受けることもないため、基本的には何度でも制限なく受けられます。
  • CTやPET、MRIが禁忌の方でも検査を受けることができる
    妊娠中の方や、大柄でCTやPETのマシンに入れない方など、幅広い方が受けられます。
  • 数値と腫瘍の大きさが比例することが多く、診断者による見落としが起こりにくい
    検査結果が数値で出るため、画像診断などほかのがん検診と比較すると、明解で判別しやすいといえます。しかしその数値をどう診断につなげるかは、診断者の判断となります。

腫瘍マーカーのデメリット

  • 数値が高いからといって、必ずしも腫瘍が存在するわけではない
    逆に腫瘍マーカーの数値が低かった場合でも、がんがないとは限りません。
  • ごく初期のがんには反応がでにくい場合がある
    数値が高く出やすい・低く出やすいなどの個人差があるため、一般的な数値が万人の診断にあてはまるわけではありません。
  • 腫瘍の存在がわかっても悪性か良性かの判断がつきにくい
    実際に悪性度を確認するには、精密検査が必要になります。

スクリーニング検査として、がん検診には必ずというほどセットされている血液検査や腫瘍マーカー。
腫瘍マーカーは他の検査の補助として行うことで、より精度の高い診断に役立ちします。

マイクロRNA(miRNA)検査

RNA

すべての細胞から排出される「マイクロRNA(ノンコーディングRNAの一種)」や、それを包む膜「エクソソーム」を調べる方法で、「がん」や「アルツハイマー型認知症」の早期発見に有効とされています。
がん検査においては、血液や尿などの液体中を調べ、がん細胞の核酸を検出します。

マイクロRNA(miRNA)検査のメリット

  • ごく少量の血液で検査でき、患者さんの負担が少ない
  • 2時間以内に検出できるため、検査結果が早く得られる
  • 1度に13種類のがんを網羅できる
  • 腫瘍マーカーより感度が高く、腫瘍のサイズに影響されないため、ステージ0などの早期がんの発見に有効と期待される

マイクロRNA(miRNA)検査のデメリット

  • すべて保険適用外(自費診療)のため、検査費用は高額
  • まだ研究段階にあり、精度が保障されていない
    これは他の検査も同様ですが、偽陽性・偽陰性となる可能性が十分にあることを理解して検査を受け、他の検査方法も併用するようにしましょう。

マイクロRNAは、血液のほかに、尿・唾液・汗などからも検出が可能なため、将来は自宅で毎朝尿検査して健康をチェックするなど、実用化に向けて研究が進んでいます。

病理検査 Pathologic examination

病理検査

生検、針生検、細胞診、病理診断、細胞検査、組織検査

組織を採取して、細胞の性質を調べる検査です。病理専門医ががん細胞を探し、良性・悪性を決定します。がんの診断に欠かせません。
PETやスクリーニング検査で「精密検査の必要あり」と診断された場合、がんが疑われる部位の細胞や組織を医師が採取して、検査機関にまわします。

細胞診断 Cytoscreening

細胞の違い

採取する対象:粘液、痰、胸水、腹水、胃液、尿、脳、皮膚組織、他

個々の細胞を調べる検査です。
粘膜の細胞は、口腔、気管、膀胱、子宮などの粘膜上からヘラやブラシのようなものでこすりとって採取します。ほかにも、皮膚から針を刺して吸引したり(穿刺吸引細胞診)、痰(たん)や尿に浮いている細胞を採取する方法もあります。

組織診断 Histopathologic examination

乳腺がんと診断された組織 扁平上皮細胞

採取する対象:全身

異常な部分の細胞1つを見るのではなく、細胞のかたまり(組織)の状態や、他の正常な細胞との関わりを調べる検査です。ある程度まとまった組織(肉片)が必要です。
採取方法は部位によって異なりますが、内視鏡で病変の一部を小さく摘み取ったり、細胞診より太い針を刺して組織を取り出したり(針生検)、手術で切除した組織を調べるなどの方法があります。
通常は組織をホルマリン固定やパラフィン包埋ブロックにし、スライス、染色をしたうえで観察するため、結果が出るまで2~7日ほどを要します。
しかし、例外的に手術中に切除した組織を、即時検査する「術中迅速病理診断」(後述)を行うことがあり、その場合は数十分以内に結果を出します。

術中迅速病理診断

術中迅速病理診断

手術中に、検査と治療を並行して行う場合に用いられます。「迅速診断」ともよばれ、手術と同時に診断を行うため非常にスピードを求められる検査方法です。
手術室で患者さんから採取した組織を、すぐに検査室に運び、病理医が腫瘍が良性か悪性か、どのくらい進行しているか、リンパ節に転移していないかを短時間で診断します。この結果を受けて、執刀中の医師が切除する範囲を決定します。
ただし、迅速診断は早さと反比例して精度が落ちるため、手術中に診断結果を出せない場合もあります。その際は診断を保留し、後日きちんとした結果を出すことになります。

便潜血検査(検便) Stool test

対象部位:主に大腸、小腸、十二指腸、胃

便潜血検査

採取した大便を調べる検査方法です。
細菌検査や寄生虫検査、潜血検査などが可能ですが、がん検査として行う場合は、主に潜血反応を調べる潜血検査を行ないます。
便の中に、ヒトヘモグロビン(赤血球の成分)が検出された場合、出血の可能性あります。
出血の原因は、主に大腸のポリープが多く、それ以外では胃や十二指腸の潰瘍などからの出血も考えられます。もし便潜血検査で陽性が出た場合は、大腸内視鏡で精密検査し、出血の場所や原因を特定します。

尿検査(検尿) Urinalysis

対象部位:腎臓、肝臓、胆のうなど

尿検査

採取した尿を調べる検査方法です。
血糖値、尿たんぱく、尿潜血、感染症の有無などを調べることで、腎臓や肝臓、泌尿器系の機能や状態を把握し、他の検査内容と合わせることで、より精度の高いがん診断ができるようサポートする働きがあります。

近年はがん患者の尿に含まれる成分で、嗅覚に優れた生物に診断をさせるという、生物診断の研究が進められており、将来的には尿によるスクリーニング検査が定着していく可能性があります。

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