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PET検査の歴史とこれから(がん検査と基礎知識)

PET検査の歴史

PET検査は、日本では1994年からスタートしました。アメリカではもっと早く1975年代に実用化されています。
しかしながら、その前進となる放射線を利用した医療は100年以上前から始まり、研究が一気に進められてきました。
現在のPET検査をはじめとする画像診断の開発には、レントゲン博士やキュリー夫妻といったたくさんのノーベル賞受賞者たちが積み上げてきた研究が、ぎっしりとつまっているのです。

1895年 レントゲン

世界で初めて体内の画像撮影を実現

レントゲンとX線画像
レントゲン博士と彼が撮影したX線画像

1895年にドイツのレントゲンがX線を発見。骨の画像を撮影することに成功しました。これがレントゲン(X線)検査のはじまりとなりました。

現在は?
現在でも医療分野で広く利用されているレントゲン。近年はデジタルレントゲンや、より精密な歯科用レントゲンなどに進化しています。さらに空港などの荷物検査でも使用されています。

1896年 放射能

目に見えないエネルギーの存在を知る

ベクレルとウラン
ベクレル博士とウラン鉱石

1896年にフランスのベクレルがウラン化合物を研究し、 X線以外にも放射線があることを発見。この放射線を発する能力(放射能)を表す単位は、発見者名にちなんで「ベクレル(Bq)」とされました。

現在は?
放射能の強さには、物質の量に対して放射能を表すBq/リットル、Bq/kgという表記が一般的に使われています。

1898年 半減期

放射能が消失していく性質を発見

キュリー夫人と半減期
キュリー夫人と半減期のイメージ

ベクレルの研究を受けて、ポーランド出身でフランス在住の キュリー夫妻がウラン以外の放射性物質トリウムを発見。1898年に強い放射能をもつラジウムを発見。放射能、ラジオアイソトープ(放射性同位元素:RI)という言葉を発案しました。
さらに 一定時間を経過するごとに、原子数が元の半分に減少し、放射能が弱まっていくことをつきとめました。
この 放射能が半分に減っていく期間のことを半減期とよび、物質によって半減期は異なります。

現在は?
PET検査で用いるFDGの半減期は2時間とされています。撮影後に体内の放射能が一定の基準以下になるよう管理区域内で待機してから帰宅します。

1899年 原子核

放射線には性質の異なるタイプが存在すると判明

放射線の種類と物体への貫通の違い
放射線の種類と性質の違い

1899年にイギリスのラザフォードが 原子核から放射線が出るメカニズムを発見。
放射線のうち、プラスの電荷を持つものをアルファ線、マイナスの電荷を持つものをベータ線と名付けました。翌1900年にフランスのヴィラールが電荷のない中性の放射線を発見し、ガンマ線と名付けました。

現在は?
ガンマ線は画像診断に、ベータ線やアルファ線は病変の治療に、と性質によって使い分けられています。

1913年 放射性トレーサー法

放射性物質を目印にする検査方法を考案

ヘヴェシー博士と放射性同位体のトレーサー法
ヘヴェシー博士と放射性同位体のトレーサー法イメージ

1913年にハンガリー出身のヘヴェシーは、放射性物質を目印(トレーサー)にして鉛化合物の溶解度を調べることに成功。これをもとに「放射性トレーサー法」が開発されました。
彼は後に「核医学の父」とも呼ばれています。

現在は?
まさにPET検査も放射性のブドウ糖(FDG)などをトレーサーにしてがんの存在を調べる、放射性トレーサー法の一種だといえます。

1930年代 サイクロトロン

人工的に放射性試薬を作ることができるように

サイクロトロンの原理と実際の施設
サイクロトロンの原理と実際の施設

1930年代にはアメリカのE.ローレンスとリヴィングストンが、放射性の薬剤を人工的につくるための施設「サイクロトロン」を建造しました。これを機に 世界中で核医学を使った病気診断の研究が進められました。

日本では1936~37年にかけて、大阪大学(当時の大阪帝国大学)や理化学研究所で初めてのサイクロトロンが建造されました。さらに大型のサイクロトロンも建造されましたが、第二次世界大戦後にGHQによって破壊されました。その後ローレンスも来日し、日本のサイクロトロン再建に寄与しました。

現在は?
サイクロトロンがあれば、PET検査で用いられるFDGなどのラジオアイソトープ(放射性同位元素、RI)を自在に作り出すことができます。

なお、PET検査を実施している医療機関のうち、施設内にサイクロトロンを備えている「サイクロトロン施設」と、外部のサイクロトロンでつくったFDGを配達してもらう「デリバリー施設」とに二分されます。

1946年 放射性薬剤の生産と核医学(アイソトープ)治療

軍事利用されていた原子炉を活用して医学へ活用

甲状腺の核医学治療のイメージ
甲状腺の核医学治療のイメージ

1946年には、第二次世界大戦が終わって、それまで 軍事利用されていた原子炉を使って放射性の薬剤を作られるようになり、医学に積極的に用いられるようになりました。
1950年アメリカで初の放射性医薬品、人血清アルブミンを発売。I-131ヨウ化ナトリウムを甲状腺の病気に使用するようになりました。

現在は?
核医学治療(アイソトープ治療、RI治療)とは、投与する薬剤につけた放射線(ベータ線やアルファ線)が、がんなどの病変に集まって病変組織を退治する治療法です。薬剤が病変に集まる原理はPET検査と同じです。

1958年 ガンマカメラ

骨の画像を鮮明に撮影できるように

骨のシンチグラフィー
全身の骨のシンチグラフィー

1958年にアメリカのアンガーがガンマカメラを発明し、ガンマ線(γ 線)を撮影できるようになりました。
ガンマカメラで得られる画像はシンチグラフィーまたはシンチグラムとよばれ、ガンマ線を利用した画像診断はSPECT(スペクト)検査とよばれます。

現在は?
骨のシンチグラフィーなどが一般的です。SPECT(スペクト)検査とPET検査は似ているものの、使用する放射性薬剤が異なります。PET検査ではPET専用の撮影装置が必要です。

1994年 日本での普及

初めてPET検査が導入される

日本での普及

日本では、1950年に放射性薬剤が輸入され、1959年に初めて厚生省が放射性薬剤を承認しました。
1960年代から国内でも放射性薬剤をつくる医療メーカーが次々と創業されました。
アメリカでは1975年代にはPET検査が実用化されていましたが、 日本にPET検査が導入されたのは1994年のことです。

実際は?
導入当初、日本ではPET検査はすべて保険適用外だったため、まだまだ受診者が少なく普及が遅れていました。
そのため数十万円をかけてPETのがん検診を受ける、というケースがメインで、PET検査を実施できる施設の数も少なく、大型の医療機関に限られていました。

2002年 保険適用へ

がんなどで必要とする人が低価格で検査を受けられるように

日本での保険適用

その後、徐々にPET検査を導入する医療機関が増えていきました。
2002年からは一部保険が適用されるようになり、がん患者さんの転移・治療後の再発診断にPETが活用され、見えないがんを発見できる確率が高くなりました。
2010年からは早期の胃がんを除くすべての悪性腫瘍に健康保険の適用が認められるようになりました。
(条件として、他の検査、画像診断により病期診断、転移・再発の診断が確定できない方に限ります)

また、 がん以外のてんかんや心疾患、大型血管炎のPET検査も健康保険適用となりました。

さらにPET検査のバリエーションも増え、ブドウ糖をもとにした薬剤(FDG)のみならず、アミノ酸やアンモニアなどをもとにした脳PETや心臓PET、また酸素や一酸化炭素などの気体をもとにしたガスPETなど、幅広い部位や疾患の検査に役立てられています。

これからのPET検査 ~新技術と未来

人類の最新技術の粋を集めたともいえる、PET検査などの画像診断。
いまや2人に1人は罹患すると言われるがん、また心臓や脳、血管など命に関わる重大疾病をいち早く発見し、治療・回復できるよう、これからもさらなる進化を遂げていきます。

より精度の高い診断で遠隔治療とも連動

PET検査の未来

近年はPET単体のみならず、PET/CTやPET/MRIなど、CTや3D断層画像やデータなどを組み合わせてより精度の高い情報が得られるようになっています。解析データは手術などの治療計画にも生かせるようになり、より安全で確度の高い治療が可能になっていくでしょう。
5G、6G…と通信環境が整備されることで、 遠隔地からの操作や診断も可能になり、より多くの人が検査を受けやすくなりそうです。

施設が増えて検査費用も低額に

PET検査の未来

現在の課題である、FDGの薬剤の半減期の短さ(消費期限)が改善されることで、PET検査施設がもっと増えていくと考えられます。
なぜなら、 現在、FDGの消費期限の短さがPET検査施設建設のネックになっているからです。
半減期が2時間のFDGは作りたてでないと効果がありませんが、そのためには検査施設内で作るか、外部から何度もデリバリー(配達)してもらう必要があります。
しかし、FDGをつくる施設「サイクロトロン」は、建設費と維持費がかかるうえ、検査施設の敷地内に広い場所なども必要になります。逆に外部からデリバリーする場合も、運搬している間にFDGがどんどん効果を失ってしまうため、製造元のサイクロトロンから遠く離れた場所ではデリバリー検査施設の実現が難しいという問題がありました。
つまり半減期の短さが、PET検査施設をなかなか増やせない原因となっていたのです。
しかし、だんだんと半減期の長いFDGが開発されるようになり、今後はもっと遠くまで運搬できるようになれば、 サイクロトロンがなくてもPET検査設備だけ導入するだけで、小さな医療機関でもPET検査が可能になります。
その結果、検査設備の建設にコストがかからなくなることで、保険適用外であっても1回あたりの検査費用を安くできるようになります。

短い検査時間で、もっと高精細な画像、より正確な診断へ

PET検査の未来

以前に比べてずいぶん高速でPET画像の撮影ができるようになりましたが、それでも撮影中の数十分間は患者さんがじっとしていないと画像がブレてしまいます。ブレがあると診断の精度が劣るうえ、画像のブレがあまりにひどいと、撮りなおしが必要になります。
そんな問題を解決すべく、 2019年アメリカでは最短20秒で全身を画像化できるPETスキャナーが開発され、撮影時間が短縮されつつあります。この撮影スピードであれば、リアルタイムで薬剤を追跡したり、細菌感染の特定にも利用できると期待されています。
今後さらに高速でPET撮影ができるようになると、ブレの発生を抑えられ、 より短い検査時間で高精細な画像を得ることができ、検査精度も格段に上がり、より早期の発見が期待できそうです。

まとめ

日本に導入されて以来この15年間で、PET検査の技術そのものもアップデートされ、さらに他の検査とデータを融合して弱点を補完しながら進化し、より早期により精度の高い診断が可能になってきました。
いずれは、現在のレントゲン(X線)検査のように、 健康診断で気軽にPET検査を受けて、その場で検査結果を参照しながら治療を受けることも可能になるかもしれません。
また、がん以外の診断や治療にも、今以上に幅広く利用されるようになりそうです。
PETや核医学はより身近な医療となっていきそうです。

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